司先輩、甘すぎです…
誰もいない…
あ、でも誰か泳いでるかもだしっ
少しの希望を抱く。
ガラッ
だいぶ焦っていたのか、勢いよく乱暴に入り口を開けてしまった。
すいません…
そう心の中で謝りながら靴と靴下を脱いで、室内プールの中に入る。
差し込んだ日の光でキラキラと水面が輝いている。
つんとした塩素の匂いが鼻をくすぐる。
あぁ、なんだか懐かしいな。
この光景に懐かしさを覚えた。と、同時に
あの記憶が蘇ってきた。
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「結局、アンタが何したって無駄なのよ。
誰もアンタなんか見てない。」
そう言われたのはいつだったか。
「橘、お前には失望した。」
冷たくて蔑むような目。
期待はずれな自分。
「み。みこと…」
自分に助けを求めながら、目の前で川に飲み込まれるあの子。
「アンタのせいでっ!!
アンタのせいで私はっ!!……なんで、なんで
助けてくれなかったの…!?」
泣きながら私を憎むように顔を歪めて、大声で叫んだあの子を見て、
私は…
ただただ、ごめんなさいを繰り返すことしかできなかった。
もちろん、そう言われたことにショックは受けた。
でも、あの時、助けられた筈なのに助けられなかった自分に嫌気が差したんだ。