司先輩、甘すぎです…
なのに、なんでこの女には嫌悪感も気持ち悪さも感じないんだろう。
そんな自分自身に戸惑う。
というか、コイツ新入生じゃん。
胸につけた赤いコサージュがそれを教えてくれる。
なんでこんなところに?
そう思ったけど、後で聞けばいいか。
「え。」
抱き上げた途端、そう声を漏らした女。
まぁ、当たり前の反応だ。
「動けなかったんだろ。お前。」
「な、なんでわかっ」
「シー、黙ってろ。」
「…。」
そう言えば黙った彼女。
大人しく従うのがなんだか少しおかしくて笑みがこぼれた。
「こんなとこに新入生のお前がいると分かれば、大騒ぎになるぞ。」
彼女はそれを肯定するように黙り込んだ。
まぁ、そりゃそうだよな。
こんな旧校舎に新入生が迷い込むなんて、早々ねぇーし。
そもそも、この場所は一般生徒は立ち入りが禁止されている。