司先輩、甘すぎです…


「…っ!美琴?」
驚いたように息を呑んだ後、また心配するように私に声をかけた司先輩。
顔は見えないけど、少し戸惑っている声色に
困らせているのはわかっている。
それでもまだ体は離さない。
あたたかい体温に先輩がちゃんといることに安心する。
なんとなくだけど、どこかふとした瞬間にいなくなってしまうのではないかと思ったのだ。
「…先輩、私本当に大丈夫です。掴まれたとこも全然痛くなかったですから!」
司先輩が自分を責めないように、さっきまで泣きそうだったのを悟られないように明るい声でそう言った。
「ほら、ね?」
ぎゅっと安心させるように抱きしめる。
…本当は、1人じゃないと私が側にいるって言いたかったけど、そんなのは私のエゴだ。
勝手に同情して可哀想だと気持ちを押し付けらるのは、一見良いことのようで本当はそうじゃない。
…それは、私が1番知っていることだ。
「……ありがとう。」
先輩はなぜかそう言ってくれて、私は何もしてないのに…と自分が情けなくなった。
きっと私を気遣ってそう言ったんだと思う。

なんだか自分がやるせなくてぎゅっと抱きしめる力を強めた。
そしてしばらく抱きしめあっていた。
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