司先輩、甘すぎです…

「ん…」
起こしてしまったと思ってギクリとしたけど、ただの寝言だったようでほっと胸を撫で下ろす。
少し顔を歪めて、額に汗を浮かべていて、何か怖い夢でも見ているのかと心配になる。

「…っ」

綺麗な唇からどこか苦しそうに短く吐息を漏らした先輩。
その顔はひとりぼっちで苦しんでいるように見えて、安心させたくて司先輩に手を伸ばした。
でも、頭を撫でようとした手は頭に触れる前に手首を掴まれ、捕まった。
そして、ぐいっと引っ張られる。
「うわっ」
ぐっと手首を掴む力が強められる。
一瞬、何が起こったのかわからなかったけど、
どうやら司先輩に手首を掴まれたらしい。
目の前の彼は昨日のような優しい目はしていなかった。
まるで肉食獣のような冷たく鋭い瞳。
「っ…」
でも、それは一瞬で司先輩はすぐに目を見開いて、クシャッと顔を歪めた。
「…ごめん。」
手首を掴んでいた手の力は緩められて、すぐに離してくれた。

「いや…大丈夫です。」
「無理しなくていい、痛かっただろ?」
そう優しく聞かれるけど、全然痛くなかった。
むしろ、司先輩の方が…
「痛くありませんよ!
そもそも、私が先輩に触ろうとしたのが原因ですし…」
「…。」
黙って私の反応をじっと見ている先輩。
きっと、気を遣っていると思われたのかもしれない。
「もう、大丈夫ですから!
それよりも、司先輩何か怖い夢でも見たんですか?」
「…あぁ。
少し、嫌な夢を見ただけだ。」
「そうなんですか…」
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