夏の夜、路地裏から始まるひとつの恋の行く末は
「好きなわけ、無いでしょ……。」
否定するも彼の表情は変わらない。
きっと馬鹿にされている。
「じゃあなんで頷いたの?」
それは、私が聞きたいくらいだ。
「知らないです。頷いたのは私だけど私じゃないので。」
自分でも意味の分からない返答。
彼はもう一度煙草を吸ってふーっと息を吐く。
「ふはっ。なーに言ってんの?んな返しで納得出来るわけないんだけどー?」
息を吐くついでのような笑い方。
妙に間延びした話し方は私の気持ちを不安定なものに変えていく。