柊星くんは溺愛したい
試合形式の練習が始まった。風戸先輩と山口先輩がどうやら同じチームになったようだ。


「山口先輩やっぱめっちゃかっこいい〜!!」

ゴールを決める度に、いやただ動いているだけで、きゃっきゃと喜ぶ彼女に私まで頬が緩む。


注目しちゃいけないと頭では理解しているものの、やはり視線は風戸先輩を追ってしまう。

ボーッと試合を見ていたのがいけなかったのだと思う。


「危ないっ!!!」


つんざくような大きな声が響いた。声の方を向くと、焦った様子の山口先輩。


そして当たったら痛いじゃすまないほどのスピードで私目掛けて飛んでくるバスケットボール。

「杏奈!?」


少し離れたところで応援していた沙也香ちゃんの声まで聞こえた。


逃げるのも間に合わないと、飛んでくるボールに固く目を瞑る。


____ダァン!!!


ぶわりと風を感じた。それだけだった。痛み1つやってこない。代わりに耳元で打ち付けるような音が聞こえた。


恐る恐る目を開けると視界いっぱいにブラウンが映る。すぐにその正体が人であることが分かった。


その人によって飛んできていたバスケットボールが弾き飛ばされたようで、横目で転がっていくのが見えた。
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