柊星くんは溺愛したい
やばい……早くこの場から離れないと!!


私のことを心配そうに見つめる風戸先輩の腕をくぐり抜け、素早く立ち上がる。何事かと先輩は私を見上げた目を見開いた。

「先輩、助けてくれてありがとうございました!!失礼しますっ」


後ろから沙也香ちゃんが呼ぶ声が聞こえたが、一刻も早くここから離れるべく体育館のドアへと一直線に走った。


『一体どうしちゃったの!?』

ごめんね、先に帰ってると沙也香ちゃんのメッセージに返信する。かわいいスタンプが数個連なった後、通知は途切れた。


必死で走ってきたから息が切れて仕方ない。体育館から離れた自販機の影にあるベンチに腰を下ろした。帰りのHRから時間が過ぎているので下校する生徒の姿はなく、静かだ。


「逃げるほど俺のこと嫌いだった?」

俯いて息を整えている所に白と黒で彩られたバッシュが視界に入ってきた。それと同時にさっきまで間近に耳にしていた声がする。


「風戸先輩……どうしてここに」


顔を上げれば結んでいた髪を解いて、髪を邪魔そうに掻き上げる彼がいた。


「杏奈、答えて。どうして俺を避けるの?嫌なことした?」


「そんな……先輩を嫌いだとか嫌なことされたとかそんなんじゃないです」
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