柊星くんは溺愛したい
絆創膏のフィルムを剥がして彼の細長い人差し指に巻き付けた。終わりました、そう告げようと口を開いたとき、離れていく私の左手を捕まえた。

さらには肩を押され、ソファにそのまま倒れる。後頭部には先輩の手が回りソファは柔らかいものの衝撃から守ってくれた。


するりと頭を撫でられたことを合図に瞑っていた目を開ける。バスケをしていた時よりも楽しそうに笑う彼が私を見下ろしていた。


「風戸、先輩?」


「ねえ杏奈。俺のフルネームは知ってる?」


じわりじわりと赤くなる頬をなんとか治めようと奮闘するも止まることはない。

「風戸柊星、ですよね」


「うん。次から俺のことは柊星って呼んで」


有無を言わせない先輩の口調に息を飲んだ。やっぱりこの人のパーソナルスペースは狭いし、誘惑するような甘い香りが降り注ぐ。


「しゅう……せい、先輩」


「まあ今はそれでいいか」

ちょっと納得いかないけど、と先輩は言った。


「今度苗字で呼んだらキスするから。もちろん……口にね」

頭から離れた彼の指が触れるか触れないかの距離で唇をなぞる。


「か、風戸せんぱ……あ!!?」

これじゃあまるで先輩にキスしてほしいみたいじゃないか。左手は掴まれたままなので自由な右手で口を覆おうとしたが呆気なく捕まってしまう。
< 21 / 22 >

この作品をシェア

pagetop