柊星くんは溺愛したい
風戸柊星(カザト シュウセイ)って名前ぐらいは流行りに疎い杏奈でも知ってるでしょ?」


腰を上げる程に近づいてくる彼女に、名前くらいは、と答える。すると呆れたようにため息を吐いていた。

「この学校にいるなら誰でも顔と名前が一致するはずの超人気者のはずなのに。これだから杏奈は!!」


沙也香ちゃんによると風戸柊星先輩はうちの学校では知らない人はいないほど有名な先輩らしい。


毎年文化祭で行われるミスターコンでは2年連続1位。先輩の影響もあり、今年の1年・2年の入試の倍率を大幅に引き上げるほど。


「なんと言っても風戸先輩は顔だけじゃないの!!!!」


沙也香ちゃんの熱弁は止まらない。圧倒されながら彼女の話に耳を傾ける。

「頭も良くって1度も学年トップを譲ったことはないらしいよ」


私たちの学校は市内では1、2位を争う進学校。私にとって学年トップなんて夢のまた夢の話だ。


「極めつけには運動神経抜群で、どのスポーツをやっても欠点なし。天は二物を与えずって言葉は嘘ね、嘘」


そんな凄い先輩が一個上にいたなんて知らなかったなぁ、と沙也香ちゃんの演説にも勝る言葉の数々に小さく拍手を送った。
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