柊星くんは溺愛したい
彼女は机に置いてあったスマホをいじり出した。私も中断していた昼食を再開する。


「それで、肝心の風戸先輩の容姿だけど……あの先輩、こんなに有名なのにSNSやってないみたいなのよ」


「そんな完全無欠な人だったらフォロワー大勢になりそうなのに勿体ないね」

「でもでも、これはマル秘情報だけど……」


沙也香ちゃんが周囲を確認してから私に耳打ちをする。クラスメイトたちはちっとも私たちのコソコソ話など気にしていないようだ。


「ごく限られた信頼のおける友達たちにだけ明かしているアカウントを持っているらしい。風戸先輩の親友、山口蒼太(ヤマグチ ソウタ)先輩がポロッと言ってたのを聞いたことがある」


山口蒼太先輩は沙也香ちゃんの片思いの相手だ。バスケ部のキャプテンを勤めていて、イケメン。類は友を呼ぶ、とはまさにこの事。


山口先輩へ猛アピール中の沙也香ちゃんだが、個人的に2人が付き合い始めるまで秒読みだと思っている。


「まあ今日もどうせ図書室行くんでしょ?ほんっと他の図書委員は何やってんのよ。私の可愛い杏奈に仕事押し付けて」


「さ、沙也香ちゃん、私は好きでやってるから別にいいんだ」
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