追いかけろ、青。
「…へいき」
今のは下手くそすぎ、私。
スマホ越しでも友利が察した空気感があった。
『決まりな。来て、明日』
「………」
また勝手に決めてくる、この男は。
別に我慢できないほど退屈してるわけじゃない。
少しだけ歩いて、1時間に1本しか通らない1両編成の電車に乗っては市街地方面へ行ってみたりもしているから。
透き通った川の流れをボーッと見つめているだけで、気づけば夕暮れになっていることだって。
『ちょうど明日はいつもより終わるの早くてさ。16時までだから』
終わる前の1時間だけでもいいから、と。
『実は彗にはそのあと、別で頼みたいことがあったり』
「なに」
『……ソッコー躊躇いなく聞くなっつーの。んー、まあ、来たときのお楽しみにしといて』
なにか良からぬことを企んでいる。
それだけは分かった私はそこでも「…行けたら」と、可愛げの欠片もない返事。
待ってるから───、
電話を切る寸前に伝えられた優しさが、そのあと電気を消したなかでも私の耳に残っていた。