追いかけろ、青。
そんな森さんは後輩マネージャーと一緒にウォータージャグとボールがたくさん入ったカゴを持って、部室へと向かって行った。
「こっちこっち」
「友利、どこまで行くんだってば…!」
「………よし。ここまで来れば」
なんとか部員たちの声を抜け、荷物を背負った友利に連れられた場所。
そこは学校の裏庭から続くテニスコート付近、人目がつかないベンチだった。
これが電話でも言っていた、“別で頼みたいこと”なのだろう。
「ここと、えーっと…、あったあった。この問3な」
「………」
リュックから取り出されたものは、春休みの課題。
ホッチキスで留められたプリントをパラパラと捲って、いくつか指をさしてくる。
「帰る」
「え、ちょっ、うそうそ!いや嘘じゃねーけど!!俺ギリ補習免れた人間なんだよマジで…!」
「…そんなの知らない」
来たときのお楽しみ、とか言ってたくせに。
なにがお楽しみだ。
まったく嬉しくないお楽しみも初めてだ。