追いかけろ、青。
野球をやっているときは大人びて見えるのに、こうして話していると同い年なんだなって強く感じる。
身長も平均以上で体つきもハッキリしているから、私よりずっとずっと大きくて。
声は少しかすれたハスキー。
「すい?」
「…、え?」
「悔しがるって?どこを?」
「あ…、実際は、何かに一生懸命になることに憧れてる子ばかりだと思う。とくに私が通ってたような、進学校の高校生は」
私がそうだったから。
いつもいつも本当は、ずっと、羨ましかった。
お父さんが見ていた甲子園中継に映っていた選手たちが。
勝っても負けても、仲間たちと一緒に涙を流して、最後は笑い合う。
がむしゃらに何かを追いかける、そんなものに私も憧れていた。
「なら、ドヤ顔振りまいてやろーぜ」
「ドヤ顔?」
「前の学校のクラスメイトたちに。私は大きな夢を見つけて、毎日がむしゃらに生きてますって。ありえないくらい楽しいですって」
毎日がむしゃらに、生きている───…。
進学校に通っていたときには考えもしなかった言葉。
当たり前を過ごして、ありふれた生活をして、不自由な思いはしなかった。