追いかけろ、青。




ああ…、そっか、これだったんだ。

ずっとずっと満たされなかったところは。
心にぽっかり穴が空いていた部分は。



「そう、思わせてやっから。俺がお前に」



私たちが追いかける甲子園という夢は、ただの野球の試合じゃない。

自分たちが逃げつづけて、ずっと背けていた何かとの戦いなんだ。


自分自身の弱さとの、試合。



「……うん」


「…つーかさ、なんかさっきから遠いんだよな」


「………」



友利が近づくぶん、私は離れる。

一定の距離感とやらをしっかり保ちつつ教えた勉強。



「……うわ、え、まって、もしかして汗とか……におう?」


「………」


「無言がいちばん死にたくなるわ。おい」



くんくんと自分自身を確かめる男をスルーして、ぜんぜん関係ないことを考えていた。


下手なことをするなと、言われている。

怪我なんかさせたつもりはないのに、怪我をさせるなと。


あなたのことを一途に想いつづけているマネージャーさんに忠告されてるの私は。



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