追いかけろ、青。
見せていないだけの独占欲
それは春休みが明けて、すぐのこと。
野球部は春季大会の予選、第一試合が最初の土曜日に行われたらしい。
隣町の高校で開催されたようで、もちろん私は結果連絡待ち。
『余裕勝ち』
さすがベスト8にまで入った実力はある、と。
今なら胸を張って言えるんじゃないかと思った。
さっそく知らされた電話は、試合終わりにかけてくれたのだろう。
16時前に鳴ったスマホへ、私は「油断しないように」と言ってしまってから素直になれなかった自分を悔やんだ。
「おい野球部っ、春の予選で準優勝ってマジ!?すげーじゃん!!」
「ってことは次どこ!?もしかして県大会じゃね!?とうとう若戸と戦うのか…!?」
それからまた日にちが経つと、本人たち以上に興奮しているのはクラスメイトだった。
まさかの春季大会、予選・準優勝。
“準優勝”という文字と、下駄箱前に飾られた賞状が、こんなにも八木坂高校を湧かせるなんて。