追いかけろ、青。
どうして私がそんなこと。
すでにタイヤがパンクして動かせないレベルなら、今さらシールで補正したって意味ないと思うのに。
何から文句を言ってやろうと思っているあいだにも「よろしく!」と言われ、なぜか私と自転車だけがその場にポツンと取り残されていた。
「……なんでよ」
リュックまで置いて行ってますけど。
自転車が盗まれる心配より、こっちの貴重品が盗られるほうを心配するべきなんじゃないの。
会話のキャッチボールが成り立たなさすぎてムカついてくる。
「ここ、パンクしやすい魔の道って有名でさ。ちょうどこれもラスイチだった」
山々の雪景色をぼうっと見つめていると、急ぐ素振りすらなく、そいつは歩いてきた。
手にした購入品を見せびらかしながら、ニッと笑ってくる。
「中学生?見ない顔だけど、おばあちゃん家にでも遊びに来たん?」
「………」
……高校生なんだけど。
あなたが平均より大きいから、私が小さく見えるだけだ。
……たぶん。