追いかけろ、青。
会話のキャッチボールが成り立たないのは知っているから、どんなに言われたところで響かない。
響かないどころか、この町の評価ばかりが私のなかで下がってゆく。
……って、なにを私もゆっくり話してるの。
「今日は普通の土曜だけど、もうそっちの中学は春休みとか?いやいくらなんでも早すぎるか…、
あ、もしかして受験?ちなみに俺はこっから少し先にある高校な」
「…………」
親が死んで、親戚の家に引き取られて窮屈な生活がこれから始まるの。
今まで過ごした町と学校を離れてまで、頼れる知り合いがいなければ映画館も本屋さんもない、こんなさみしい町で。
なにも知らないくせに。
なにも、なんにも、知らないくせに。
「っ~、うるさいバカっ!!!」
「うわっ、えっ、ちょっと!」
せっかく修理した自転車を倒すようにして、感情のまま八つ当たると。
ポトンっと、どこからか落ちた野球ボール。
「あっ、なあ君!怒らせたのは悪かった…!でもほんと助かったよありがとなーー!!
気をつけて帰るんだぞーーー!それと雪虫は可愛いぞーーー!!」