追いかけろ、青。
「俺、弁護士になりたくてさ。これでも国立目指してんだよね」
「…すごいね」
「俺みたいに理不尽な思いをした人たちを救いたくて」
「…俺みたいに?」
そこは話されなかった。
沈黙が終了を合図される。
人には聞くくせ、自分が踏み込まれるとシャットダウン。
「かつてこの町には“天才二刀流中学生”とか呼ばれてた奴が2人もいたの、…知らないか転校生だから」
「…知らない」
「ちょうどいいや。そいつらはさ、ピッチャーのくせして打席でも点を稼ぐホームランバッター。だから二刀流。
ひとりで野球できんじゃないの?とか周りに言われてたりして」
無邪気に笑いながら、今度は語り始めた。
「んで、当たり前だけどその2人はそれぞれの学校で先輩を差し置いて、中2でエースまで張ってた」
“中2でエースまで張ってた”
その言葉が、私も過去に誰かから聞いた覚えがあったから。
「お互いに境遇が似てたから、良きライバルだったりもして」
「…じゃあやっぱり、その2人は若戸学園に行ったの」
「お、鋭いね早見」
……急に呼び捨て。
残念だけどあなたが初めてじゃないことに、そこまでの驚きなくスルーできた。