追いかけろ、青。




「俺、弁護士になりたくてさ。これでも国立目指してんだよね」


「…すごいね」


「俺みたいに理不尽な思いをした人たちを救いたくて」


「…俺みたいに?」



そこは話されなかった。
沈黙が終了を合図される。

人には聞くくせ、自分が踏み込まれるとシャットダウン。



「かつてこの町には“天才二刀流中学生”とか呼ばれてた奴が2人もいたの、…知らないか転校生だから」


「…知らない」


「ちょうどいいや。そいつらはさ、ピッチャーのくせして打席でも点を稼ぐホームランバッター。だから二刀流。
ひとりで野球できんじゃないの?とか周りに言われてたりして」



無邪気に笑いながら、今度は語り始めた。



「んで、当たり前だけどその2人はそれぞれの学校で先輩を差し置いて、中2でエースまで張ってた」



“中2でエースまで張ってた”

その言葉が、私も過去に誰かから聞いた覚えがあったから。



「お互いに境遇が似てたから、良きライバルだったりもして」


「…じゃあやっぱり、その2人は若戸学園に行ったの」


「お、鋭いね早見」



……急に呼び捨て。

残念だけどあなたが初めてじゃないことに、そこまでの驚きなくスルーできた。



< 176 / 377 >

この作品をシェア

pagetop