追いかけろ、青。

「俺だってずっと目指してたんだよ、甲子園」



ここにいるのは、友利でもあった。

ここにいるのは、私にとっての、友利。


この人もかつては周りから期待される、才能あるピッチャーだった。

でも諦めざるを得ない理由があって、1度は野球を諦めた。


それでも、それでも本当は誰よりも甲子園という場所に憧れていた、またひとりの友利なんだと。



「でも俺の場合は、希望に変えようと思うことすら自分を苦しめるんだ」


「…なにが…、あったの」



ずっと続けてきたことを辞めるということ。
ずっと追いかけてきた夢を諦めるということ。

彼らは諦めなければ、いけなかった。


そこにはそれ相当の葛藤や苦しみがあったんだろう。



「ボクサーってさ。大きなパンチを顔や頭に食らって肉体的だけじゃなく、精神的ショックを受けると…、
次からはそのときの恐怖がフラッシュバックするらしいんだ。知ってた？」


「…知らなかった…」


「それで、2度とリングに上がることすらできなくなる場合があるんだって。
それくらい……トラウマが埋め込まれる。…実は野球にもあんだよね、それ」