追いかけろ、青。




デッドボール、食らったんだ。

ついでのように付け足された久賀くんの言葉に、私は口を閉じるしかなかった。



「ピッチャーは友利、バッターボックスには俺。5回表、追加点のチャンス。打てると思った」



でも飛んできたのは、頭めがけたストレート。

かなりのスピードが乗った抜け球だったため、どうしても避けられなかったという。



「当たりどころが悪くて俺は失神したけど、幸い脳に影響が残ることはなかったから、目が覚めたときホッとしたよ。
危なかった、次からは気をつけよう、また野球ができるって……嬉しかった」



─────けど。



「俺はまず、野球を見るだけで動悸と息切れ、過呼吸が起きるようになった」


「…え…、」


「でもなんとか治療していくうちに、それは大丈夫になった。そしたら今度は……、
ボールを握っただけ。もうそれだけで…震えるんだよ、全身が」



ほんと、参ったよ───…。


消えそうだった。

たぶん触ったら消える、それくらいの。



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