追いかけろ、青。




「だから俺はもう、物理的にも野球ができなくなった。ボールを投げられなくなった。大好きだった野球が……怖くなった」



故意的じゃない、わざとじゃない。
それは私にだって分かってる。

友利がそんな姑息なことするはずがない。

たとえ負けていたって、そんな汚いことはしない。


だから……仕方ないことだった。
どうしようもなかったの。


でもそれは友利側の視点であって、じゃあ久賀くん視点で見たら?


どうしようも───…できなかった。



「終わったと思ったよ俺。今まで野球に懸けて追いかけてきた夢は、磨いてきた技は、費やしてきた日々はなんだったんだって。もう何も見えないくらい……真っ暗」


「……私、親が自殺してる」


「………え……?」


「私のお父さん、…車のなかで練炭を使って……、自分で命を絶ったの」



びっくりした。
そのあと、お父さんに再会できたとき。

ものすごく綺麗な顔をしていたから。


寝てるだけでしょ…?と、変な錯覚で自分自身を洗脳してしまいたくなるほど。



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