追いかけろ、青。
手放されたバット、衝撃に外れたヘルメット。
試合を中断させた審判、駆けつけてくる両校のチームメイトたち、初めて聞くマネージャーの声。
バッターボックスにて俺と同じ1番を背負ったそいつは……倒れていた。
『おいっ、意識ないぞ…!!救急車ッ、救急車だ…!!』
『試合中止!!だれか久賀を一緒に運んでくれ……!』
『久賀っ、しっかりしろ……!!』
誰もが“久賀”を呼ぶ。
俺だけが敵で、俺だけが仲間外れ。
仕方ない、それはしょうがない。
だとしても、わざとじゃない。
わざとじゃないんだ。
違うんだよ、聞いてくれよ…。
球が抜けてしまった。
うまくコントロールできなかった。
『この度は本当に本当に申し訳ございませんでした……っ』
いつも賑やかな父と母が、病院で久賀の両親に深く頭を下げていた。
大きな脳震盪はあったが大事にはならなかったものの、彼はもう、野球を目にするだけで過呼吸が起きるほどになってしまった。
久賀の夢を、才能を、潰したのは俺だった。