追いかけろ、青。
俺が甲子園に行ったら、お前に初めての景色を見せることができたら。
そのときやっと俺にも見せてくれるのかって。
いつもそんなことばっか考えて目指してんの、知らねーだろうけどあいつは。
「森には中学のときからマジで支えられてる。…俺の情けない姿も、たくさん見せてきた」
「情けなくなんかないっ、友利はいつも…、いつだって、格好良かった…!」
「……さんきゅ」
格好いい、と。
それは俺の背中をいつかに押してくれた彗とは正反対の言葉。
『今のあんたは……すごく格好悪い』
違うんだ森。
俺はずっと、ずっと、格好悪かったんだよ。
逃げて逃げて、逃げつづけてた。
だから今も、俺の心を占領するのは彗だ。
「明日からも頑張ろーぜ。…同じ野球部として」
「友利…っ」
荷物を背負いなおして、教室を出る寸前。
森の悲痛な呼び止めに応えたのではなく、俺は自分自身がそれを言いたかったから振り返った。