追いかけろ、青。




そう。
中高一貫校に通わせてくれたお父さん。

父子家庭で、決して裕福だとは言えなかったが、それでもいつだって私の人生を優先してくれた。



「最悪、どうしても自分では決められなかった場合。そのときは賭けてみるってのもアリじゃないか?」


「……賭ける…?」


「たとえば。野球部が甲子園に行ったら…自分も進学する、とかね」



からかうように笑ってきた、先生。

“野球部”だなんて一括りで言ってきたけれど、私には誰のことを指しているのか分かってしまう。



「なんとか…考えてみます。ありがとう、バーチー」


「…あんたそれ、わざとだな?」


「…じゃあ……おかあさん」


「おい。あたしはまだ未婚の32だっつの」



そこまで悪い町じゃない。
そこまで悪い学校じゃない。

そう思えるくらいには、この町の住み難さに慣れてきているんだと。


友利がいない都会と、友利がいる田舎。


どちらを選ぶ?なんて、今の私に聞かれたとしたなら。

答えなんかもう、わかってる。



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