追いかけろ、青。
今だって……ほんと馬鹿みたい。
「……ごめん」
ほら、なにも変わってない。
言葉に困るとまず最初に折れる、あんたの情けないようで優しい癖。
ごめんって……、なにがよ。
呆気に取られるあたしの腕をそっと離して、水悠は寂しそうに微笑んだ。
「…裏で口合わせ、なんて。そんなことしてないよ俺」
知っている。
そんな姑息なこと、しない。
あんたはそんなこと、しない。
「確かに俺は野球を捨てたかもしれない。でも…、忘れたことは1度だってない」
「っ……」
見たかった。
あんたがどんどんすごいピッチャーになっていくところ。
友利とずっとライバルで、もしかしたら仲間に、チームメイトになってるかもしれなくて。
そんな、そんな未来が見たかった。
「約束───…守れなくてごめん、静奈」
格好悪いのは、あたしだ。
そばにいる気になって、わかった気になって、結局は何もできていない。
いつもいつも何もできなかった。
友利にも、水悠にも。
うわべだけの言葉を送って、それだけ。
「あたしはっ、あたしはあんたが…、ミユが……」
「…俺が、なに…?…シズナ、」
「っ…、もーいい…!!」
あたしは涙を振り切るように、走った。