追いかけろ、青。
ぎゅっとバットを握った友利の覚悟と決意が、遠く離れた私のもとにも伝わってくる。
プレッシャーや緊張は人一倍感じているはずだ。
ここで託されたチャンス。
点を取ることで近づく夢。
20という番号を背負って、友利は堂々と構えた。
《なんとここでスクイズでしょうか…!?》
実況が驚いたように放ってから、ハッと意識が戻った。
スクイズ───、
それは、スイング体勢から急遽バントに変えること。
これもまたひとつの策であり、騙しの戦法とも言える。
おもいっきし振るつもりで構えたバッターは、ピッチャーがボールを放った瞬間にバントの構えへと変更させた。
もちろん守備も長打警戒で後ろに下がった配置だったため、躊躇う。
そこを逆手にとった友利の判断か、監督の命令か。
《まさかのスクイズに動揺したピッチャーは送球エラー!3塁ランナーはホームイン、1塁もセーフ!!
八木坂高校、ここにきて豪快な作戦で1点リードさせました…!!》