追いかけろ、青。




風向きが傾いた。
明らかに、八木坂高校に傾いた。


1塁を踏んだ友利を代走に代えて、そこからもう1点を追加させる。

9回表は無失点、三者凡退に抑え───、



《ここで試合終了!決勝進出となったのは八木坂高等学校です!!約28年ぶりの若戸学園との決勝を決めました!》



友利を代打起用したことが、勝利の切り札となった。


八木坂高等学校・決勝進出。


嬉しさを全身で表現するかのごとく、画面内にて抱き合う球児たち。

そのなかでもとびきりの輝きを放つ笑顔だけが、私の視線を奪っては占領する。



「すーちゃん、すーちゃん」


「……えっ、あ…、ごめん。どうかしたの?」


「あははっ、恋する女の子!」


「………は?」



まりなが何を言っているのか、いちいち掘り返すことはしたくなかったけど。


バストバンドをしているなかでも打席に立って、できるかぎりの方法で点を稼いで、チームを導いて。

あれは完全なる、友利が必要不可欠な勝利だった。


勇気をもらえた。
絶対的な何かが与えられた。


あんな姿を見て格好いいと思わないほうがおかしいんだってば、と、開き直れるくらいには。



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