追いかけろ、青。




おめでとう───、


ちゃんと言えただろうか、私は。

できるだけ表情を柔らかくして、言えただろうか。



「っ、」



ふわり。


予測すらしていなかった優しさが、とつぜん私の頬に触れた。

友利の大きくて熱い、しっかりとした手のひらが頬をぎこちなく撫でてくる。



「…違ったわ。泣いてるように見えた」


「……泣いてなんか、ない」



むしろ喜ぶべきところでしょ?
泣くなんておかしいでしょ、友利。


もしかすると彼は、こんな時間を設けたかったがために私に日誌を書いてくれと頼んだのかもしれない。


今になって気づいて、ちょっとだけ後悔。

でも。

なんとも心地がいい放課後という空気感に、たまには甘えたくもなる。



「…ずっと気になってたんだけど。これって、なんのサイン?」


「ん?あー、ツーアウト」



友利がよくマウンド上で作っているハンドサインを、真似て見せてみる。

キツネみたいだから、私のなかで“キツネサイン”なんて呼んでいた。



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