追いかけろ、青。




「ははっ、それだとただのキツネな。親指はこっち」



軽やかに、スムーズに、正しいものを教えてくれる。

触れられてドキリと勝手に胸を鳴らせて、耐えがたい気持ちを感じているのは私だけなのかと思うと、どこかやるせない。



「アウトあと1コ取ればいいんだぞって、だから頑張ろうぜって意味合いもあっかな」



友利も同じように右手で形を作った。

これで明後日の試合、その場面を目にしても疑問は浮かばなそう。


マスクから視界はちゃんと見えるの、とか。

あの防具って重くないの?とか。


素人だからこそ出る質問に、友利はひとつひとつ答えてくれる。



「友利、私……だめかも」



吹奏楽の楽器音、チアリーディングの応援、グラウンドから響く声と金属音。

みんな頑張ってる。
みんな、一生懸命。


だからひとつくらい、ここに叶わないことがあっても仕方ないよね。



「…だめ?」


「うん。進学……、だめかも」



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