追いかけろ、青。




「そいつに対しても今みたいな顔してた?」


「っ……」


「…こんな熱い手、してた?」



なにが言いたいの。
どうせ分かってるくせに。

ここまで私が戸惑っているのも、一声一声が震えて仕方ないのも。


ぜんぶぜんぶ、初めてだからってこと。



「なあ、もし俺が本当に甲子園行ったら……欲しいものあんだけど、くれる?」



意外と長い、まつ毛とか。

意外と筋の通った、鼻とか。
意外と薄い、唇とか。

意外と切れ長で形の整った、目とか。


意外と甘すぎる、声とか。


意外ばかりが目に入ってしまう、どうしたってこの距離は。



「……ほしい、もの…?」


「そう。すげえ欲しくてたまんねーの」



それは私が与えてあげられるもの…?

誰かに何かを与えるなんて、そんなのできた人間じゃないよ私。


いつも与えられてばかりなの。


あんたに、友利に、たくさんたくさん与えられてばかり。



「どんなもの…?」



高い?安い?

簡単に手に入る?
それともなかなか手に入らない…?



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