追いかけろ、青。




「…やめておいたほうがいいよ」


「なんで?」


「……その子は、きっと……よくない、から」


「そーか?…俺は知っていくたびに可愛いとしか思わねーけど」



気づけば指がひとつひとつ絡まって、また握られた。

あつい、あつい。
なにが熱いのかも、わからない。



「っ、とも、り」


「俺は必ず行く。ぜったい、行くから」



オススメしない。
その子だけは、やめておいて。

あんたが安易に近づく女の子にしては、少し厄介だと思うから。


だってその子、たぶん雪虫にすら怖がるでしょ…?



「だから、彗」



─────だから、




「甲子園行ったら、
その子を俺にくれないか───?」




私は、口下手だ。
私は、可愛げもない。

慰めたり、元気づけたり、そんなことすら器用にできない。


相手が期待している反応をわざわざしてあげられるほど、優しくもない。


抱えた気持ちをうまく吐き出すことさえ、心から泣いて笑うことさえ、できない。


それでも唯一。


うなずくだけじゃなくて、手を握ってあげることも、できたっけ。








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