追いかけろ、青。
だって俺の脳内にはいつだって、今だって、ひとりの負けず嫌いな女の子がグローブ持ってんだから。
『ねえパパっ!あたしのほうが速かったでしょ!?ミユなんかよりずっとずっと!!』
『ん?ああ!そうだな!』
『…おじさんも苦労するね。ワガママ娘を持つと』
『ちょっ、うぉおい水悠っ、しーーっ!静奈に聞こえたら大変なんだからな…!!』
俺と自分が投げた球、どっちが速いかって、いつも父親にジャッジを求めていたシズナ。
小学生ながらに俺は、おじさんが気をつかっていることは察していた。
明らかに俺のほうが速いしコントロールもあるし、本格的。
でも正直に言ってしまったなら最後、女王様は泣き喚き散らすという特典が付いている。
『なーーにーー?パパっ、ミユとなに話してるのーー?』
『なっ、なんでもないぞーー!静奈はすごいなあって!なっ、水悠!』
『そーそー』