追いかけろ、青。




可能性はいろんなところに落ちている。


ひとつの道が塞がれたところで、未来が消えるわけではない。


確かに目指していた未来は遠のいてしまったかもしれない。

けれど、そうなったことで新たに生まれる道だってある。


逆にそうでなければ生まれなかった道だってあるんだ。


───そう教えてくれた人間たちがいたことを思い出した。



「あたしが連れてくから…っ」



まっくらな世界に、一筋の光。

下ばかり見ていた俺の前、伸びてくる手。




「甲子園!!あたしが水悠を連れて行く……!!」




終わってない。

俺の、俺たちが一緒に追いかけた夢は終わってなんかない。


見上げればいつだって広がっているんだ、その青は。



「しず、な…っ」



しゃがんで、ぎゅっと、握りあった手。

涙だらけの顔を映しあって、めいっぱい泣いて、泣いて。


言葉のない言葉が、そこから伝わってくる。


あの日の出来事、叶えたかった夢、諦めた過去。

ぜんぶぜんぶ、今に繋がる道だったんだって。

無駄じゃない。
すべて必要で大切なことだったんだって。



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