追いかけろ、青。
チームメイトたちを鼓舞するキャッチャーの声を聞いたところで、あたしは1度、ダッグアウトから抜けて外の空気を吸いに向かった。
だって、息が詰まりそうだったから。
気迫負けだなんて言いたくないけれど、気持ちを強く持たなくちゃと思った。
「シズナ、よかった会えた」
「っ!」
「水分ちゃんとある?これ、シズナの好きなやつ」
ちょうど出たところ。
客席に繋がるゲート前、冷えたスポーツドリンクを渡してきたのは水悠だった。
「客席、すごい人だよ」と、笑いかけてくる。
ものの、あたしのほんのわずかな変化を察知しては覗きこんできた。
「うわー、かお真っ青」
「そ、そんなわけ…」
まさに圧巻だ。
八木坂高校の応援がいるはずの3塁側よりも、1塁側の客席に押されてしまって。
中央席で観覧している一般客ですら、全員が若戸学園を応援している気がしてならない。
若戸の強さはプレーだけじゃない。
団結力、結束力、応援もまたひとつの攻撃なのだと思わせられた。