追いかけろ、青。
無我夢中に座席から腰を上げ、大歓声のなかで声を放つ。
こんなふうに名前で呼んだことなんか、なかった。
ツンと鼻をそっぽ向かせるように可愛くない反応ばかりで。
こんなに遠い場所からでは見えもしない、聞こえもしないはずだというのに。
バッターボックスに立ったそいつはまるで、「それを待ってた」と、意地悪に笑ったような気がした。
「─────………」
私はこの日、こんなにも澄み渡った空は生まれて初めて目にしたほど。
とてもきれいで、爽やかで、強く優しい。
高く高く上ってゆく青を見た。
その瞬間。
ずっと我慢しつづけていた気持ちが、一筋の涙となって私の頬を伝った───。