追いかけろ、青。
「それでも行くんでしょ、甲子園」
「…おう」
「…行ってよ。ほんとに」
「……わかった」
仕方ないことはあるよ。
どうしようもなくて、どうにもできなかったことは、あるよ。
私にだってあるよ。
「私…、ピッチャーからキャッチャーになって、その上で甲子園に行く友利が見たいから」
「…………」
「この八木坂高校でキャッチャーとして出場する、あんたが見たい」
たとえ背番号が1番じゃなくても。
マウンドの中央に立つ存在じゃなくても。
キャプテンじゃなくても、若戸学園代表じゃなくても。
それでもチームを引っ張る重要人物である、八木坂のキャッチャーとして。
「っ、な、なに…?」
すると友利はどういうわけか階段を上って、私がいる場所へと近づいてくる。
最終的には手を伸ばして、なにをするかと思えば私の背中を擦り出した。
「いや、朝、痛かったかなって。強くしすぎたかも俺。…ごめんな」
「…そ、そんなの言ったら私だって、」
「俺は男だし、筋肉もあるし、あんなの痒いくらいだけど。お前は…女の子だから、さ」