追いかけろ、青。




私も目指してるよ。

とは、言えそうになかった。


彼女のように堂々とグラウンドに立てないし、そもそも野球のルールすらまだ覚えてない。



「あたしは中学のときからマネージャーして友利のこと知ってるし、友利がいちばん苦しんでる姿だって見てきた」



ああ、そーいうこと。

今はいいかとマフラーをせずネックウォーマーだけだったから、そんなに怒っているんだ森さんは。



「怪我を甘く見ないで。たとえ外傷に残らなかったとしても、…2度と野球できなくさせることもできるのが怪我なんだから」



大袈裟だ。
背中を叩かれたから、私も叩いただけ。

ここまで“怪我”に敏感な森さんもどうかしている。



「いい?わかった?これ以上友利に下手なことしたら許さないから!!」



自分のほうが知ってるから、
なんだというのだ。

苦しんでる姿を見てきたから、
なんだというのだ。


そのとき何もできなかったら意味なんかないのに。


そのとき救えなかったら、意味ないんだよ。



「影があるから…、光は輝けるんだから」



性格を表したかのような、型崩れなどしていない一つ結び。

最後に苦し紛れの表情でつぶやいて、大股歩きで去っていった森さん。


まるでその“影”が主人公、みたいに言うんだね。



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