ズルいよ、藤堂くん



「柔らかくて、美味しそう。食べてい?」



私の手のひらから、
カップケーキを受け取る藤堂くん。



「っ、どっ、どうぞ」



手作りじゃないけど、
藤堂くんに受け取って貰えるのは少し緊張で。



そんなことを考えている間に。



「あーーっ、
柔らかくて、いいよね、カップケーキ」



あっという間に、
カップケーキを食べてしまった藤堂くん。



食べ終えたからか、
満足げにニコッと笑う顔とバチッと目が合って。



──────ドクン



と、心臓が鳴った瞬間。



「〜〜っ、すき、です、」



思わず出てしまった、その言葉。



「ふっ、早川さんって、ほんと、かわいー
ねぇ、──────1番柔らかいのちょーだい」



その言葉と同時に、
塞がれたのは私のくちびる。



私が〝恋〟して、好きになったのは。



〝教科書を持って来ない〟で有名な人で。



そして、何を考えてるのかも分からないけど。



優しくて、頭も良い、藤堂くんは。
トータルして、──────やっぱりズルい。





fin.
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