鬼の生贄になったはずが、溺愛されています
ガンガンッ! と大きな音がしたかと思うと、木が割れる音が響き、樽の中に多くの光が差し込んだ。
樽の中から頭上を見上げて見るとそこには男が立っているのがわかった。

とても大きな男だけれど、逆光になっていてその顔はよく見えない。
男が片手で樽の蓋を引き剥がし始めた。

ベリベリと音を立てて、穴の開いた蓋は簡単に剥がれ落ちていく。
この男が素手で蓋を壊したのだと気づいた時、ハナは一瞬寒気を感じた。

いくら内側から叩いてもびくともしなかった蓋を、この人は道具も使わずに破壊したのだ。
その怪力に恐怖を懐きながらも、ハナは無理やり微笑んだ。

この人は命の恩人になる人だ。
あまり怯えているわけにもいかない。

すっかり蓋が壊されてしまった樽の中から、ハナは恐る恐る立ち上がった。


「なんだお前、どうしてこんなところにいる」


男が不思議そうな顔でハナの顔を覗き込む。
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