鬼の生贄になったはずが、溺愛されています
その声にか細い悲鳴を上げて飛び起きる。
ハナの目の前にいたのは両親ではなく、角の生えた大きな鬼。

ここは家ではなく、深い洞窟の中だった。
鬼は小石を集めて枯れ草や枝を囲み、その中で火を焚いていた。

ゆらゆらと揺れる炎に周囲のゴツゴツとした灰色の岩が照らし出されている。
ハナが横になっていた場所は少し平坦になっているだけで、同じような意思や岩の上だった。


「よく寝ていたな」


鬼はそう言って笑う。
ハナは恐る恐る鬼の様子を確かめた。

あぐらをかいて座っているけれど、十分に大きい。
全体的に筋肉質で触れるだけで怪我をしてしまいそうだ。

ただ両親から聞いた話と違っているのは肌の色だった。
鬼の肌は真っ赤だったり、真っ青だったりすると教えてもらっていたけれど、今目の前にいる鬼の肌は村人の男たちと大差なかった。

日焼けして浅黒くなっているが、人の肌だ。


「食べるか?」
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