鬼の生贄になったはずが、溺愛されています
そう言って豪快にイワナにかぶりつく。
ハナも同じように夢中になって魚を食べた。

思えば両親が死んでしまってから食欲がわかず、こうしてしっかり食事をしたこと事態が久しぶりのことだった。


「私は生贄にされたんだと思います」


食事を終えて一段落ついてから、ハナはぽつりと言った。


「今までにも生贄にされた子供を見てきた」


鬼は静に答える。


「その子たちを、食べたんですか?」


ハナの質問に鬼は大きく目を見開いて左右に首を振った。


「俺は人間は食べない。こうして魚を取ったり、野ウサギは口にするけどな」

「じゃあ、子どもたちは?」

「しばらくはここで一緒に暮らしたりもした。だけど人間は弱いな。特に子供は。すぐに病気にかかったり、野生動物に襲われたりして、ダメだった」


鬼の視線が下を向く。
揺れる炎をジッと見つめるその目は、まるで人間そのもののように見えてハナはとまどった。
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