鬼の生贄になったはずが、溺愛されています
「だいたい。俺と人間じゃ寿命が違いすぎる。一緒にいたって、先に死ぬのは人間だ」

「あなたは何歳なの?」

「今年でちょうど千歳だ」

「千年も生きているの!?」


驚いて声を上げると鬼は楽しげな笑い声をあげた。
笑うとエクボができることをハナは知った。


「そんなに驚かなくてもいい。鬼の世界じゃまだまだ若い方だ」

「そうなんだ……」


ハナには想像もつかないくらい長い年月生きてきたらしい。


「光鬼はずっと、この山で暮らしているの?」

「光鬼?」


つい、村人たちが読んでいる名前を口にしてしまった。
もしかして気を悪くするだろうかと思ったが、出てしまった言葉を引っ込めることはできない。


「村人たちが狭霧村にいる鬼のことを光鬼と名付けたの」

「俺の名前か?」

「そう。太陽の光を全部奪っているからだと」


そう説明してからハナは少しだけうつむいた。
村人たちは鬼がいるせいで山を崩すことができないと言っていた。


「だけど私はいい名前だと思うわ。あなたに似合ってる」

< 24 / 77 >

この作品をシェア

pagetop