鬼の生贄になったはずが、溺愛されています
☆☆☆

村に捨てられ、光鬼にまで捨てられることになったら本当に行き場がなくなってしまう。
4日目の朝、まだ横で眠っている光鬼の寝顔を見つめてハナは焦燥感にかられていた。

鬼の生贄にされればすぐにでも殺されてしまうと思っていた。
だけど光鬼はなにもしてこない。

攻撃どころか、自分の基本的欲求をハナで満たそうとも思っていないようだ。
それはハナに殺すような魅力も、そして抱くような魅力もないからだろうか。

生贄としての使命を果たせないハナを、光鬼はこれから先どう扱うだろう?
もしかしたら、すでにハナを持て余していて捨てる算段を立てているかもしれないのだ。

そう考えると居ても立ってもいられなくて、ハナは自分で火を起こし始めた。
火起こしは家事の一貫なのでなれている。

前日の火種はまだ残っているから、そこから枯れ葉や細く削いだ木の皮に火を移す。
少し息を吹きかけてやるとすぐに大きく燃え始めるから、それを小枝に移す。

そして最後に大きな木に火をつけるのだ。
そこまでも作業をスムーズに行ったハナは、今度は鉄製の鍋に水をくんで戻ってきた。

鍋は山に打ち捨てられたものを光鬼が拾ってきたものらしく、取ってがいまにも壊れてしまいそうだ。
水が沸騰し始めたら山菜を入れる。

どの山菜も少し火を通せばすぐに柔らかくなって食べられるようになる。
鍋の中でシナシナになった山菜は一度取り出して、石で作った包丁で切り分けた。

これでおひたしのようにして食べられる。
次は魚だ。
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