鬼の生贄になったはずが、溺愛されています
☆☆☆

鬼の体というのは本当に不思議だった。
あれだけ出血していたはずなのに、洞窟に帰り着く頃にはすっかり血は止まっていた。

光鬼は傷口に薬草をすりつけると、これで明日には傷もふさがっていると言った。


「でも、どうしてあんなところにいたんだ?」


食事中、そう聞かれてハナはうつむいた。
炎がゆらゆらとゆらめいて洞窟位の中を照らし出している。


「光鬼がなかなか帰ってこないから、探しに出たの。そしたら、道に迷ってしまって」


モゴモゴと口ごもりながらも説明すると、光鬼は呆れた様子でため息を吐き出した。


「あれほど暗くなって出歩くのは危険だ。人間は夜目がきかないだろう」


そう言われてハナは小さくうなづく。
今になっては自分でも反省している。

危うく野生動物のエサになってしまうところだったのだ。
挙句の果てには光鬼に怪我までさせてしまって、本当にやくたたずだ。

落ち込んで食欲が失せてしまったとき、光鬼が思い出したように洞窟の済に置いてあった藤の籠を持ってきた。


「これが今日の収穫だ」
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