鬼の生贄になったはずが、溺愛されています
籠の中からは生臭い匂いが香ってきていて、ちゃんと川魚を収穫してきたのであろうことが伺えた。


「これをお前にやる」


籠ごと差し出されてハナはとまどいながらもそれを受け取った。
籠の中を覗き込んだ瞬間「わぁ!」と声を上げ、絶句する。

その中にいたのは一匹の大きな魚で、うろこは虹色に輝いているのだ。
この魚については村の人達から伝え聞いて知っていた。

山の川にはとてもめずらしい虹色の魚がいる。
その魚を食べたものは、生涯幸せになれるという。


「その魚を知っているか?」

「えぇ、聞いたことがある。だけど本当にいたなんて……」


籠の中でもう動かないその魚は、それでもキラキラと輝きを放っている。


「とても貴重な魚で、数年に1度とれるかとれないかだ。今日は運良くとることができた」


そう言う光鬼はとても嬉しそうに頬を上気させている。


「でも、こんな高価なものはいただけないわ」


自分は生贄であると思いだしてハナは左右に首を振った。
とても嬉しい贈り物だったけれど、受け取ることはできない。
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