鬼の生贄になったはずが、溺愛されています
☆☆☆

洞窟を出た悲しさはいつまでのハナの胸の中にくすぶっていた。
平坦な山道を歩いているときも、突然出現した崖に驚いて迂回しなければならなくなったときも、胸の中は泣いていた。

これから先もずっと光鬼と一緒にいることができると思っていた。
だって光鬼は幸せになれる虹色の魚をハナのために用意してくれた。

光鬼だって、ずっとハナと一緒にいるつもりがあったから、あんなことをしたのだろう。
だけど、いつどこでどう気持ちが変わってしまったんだろうか。

ハナの幸せを考えた時、自分の幸せを考えた時、結局別々に暮らしたほうがいいと光鬼は答えを導き出した。
その気持は理解できるけれど、ハナの感情は全くついていかなかった。

グズグズと引きずるような気持ちを持ちながら下山していたためか、何度も小石につまづいてこけた。
そのたびにハナの白い膝小僧に血が滲んで出た。

途中何度も休憩しながら下山していると、だんだん周囲が暗くなりつつあることに気がついた。
山の夕暮れは早い。

太陽が傾いてきたらすぐだった。
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