鬼の生贄になったはずが、溺愛されています

☆☆☆

パチパチと木が爆ぜる音が聞こえてくる。
ハナは光鬼の腕に抱かれて眠っていた。

心地よい疲れが全身を覆っていて、不快眠りの中でとても幸せな夢を見ていた。
光鬼と自分と、そして見知らぬ小さな子どもの３人で、山で暮らしている夢だ。

あの子供は誰だろう。
見たことがないけれど。

しかし夢の中でのハナはその子に強い愛情を抱いていた。
まるで我が子のような可愛らしい子。

そんな夢が途中で冷めたのは光鬼が起き上がったからだった。


「どうしたの？」


光鬼は起きたかと思うとおもむろに火がついた太い枝を一本握りしめて、洞窟の入り口へと向かった。
きっと、しっかりと熟睡はしていなかったのだろう。


「誰か来る」


真剣な表情で光鬼は言うが、ハナにはなにも聞こえてこない。
外はまだ暗く、鳥の声さえ聞こえない。


「獣かしら？」