鬼の生贄になったはずが、溺愛されています
ハナの心は自分にはない。
そう悟った瞬間力が抜けてハナの手を離してしまった。

ハナがハッとしたように武雄を見つめる。
武雄はハナから視線を離した。


「行け」


今自分にできることはこれくらいしかない。
ハナの幸せを考えた時、あの鬼と引き離すべきではないとわかってしまった。

このまま自分と一緒に村へ戻ったとしても、ハナはずっと鬼のことを思うだろう。
ハナは返事もせずに光鬼へと駆け寄った。

村人たちが混乱した声をあげる。


「もういい。帰ろう」


武雄はぽつりと呟くようにそう言ったのだった。
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