鬼の生贄になったはずが、溺愛されています
溺愛されています
若い男と一緒に下山するはずのハナが目の前に現れて光鬼は混乱した。
どうしてここにいる?

俺はこんなふうに人から疎まれる存在だ。
ハナはやっぱりここにいちゃいけないんだ。

そんな感情とは裏腹にハナの体を片手で抱えあげていた。
村人たちからの攻撃を避けながら走り出す。

村人の数人が追いかけてきたけれど、さっきの若い男が止めに入っているのが目に入った。
どうしてだ?

どうして俺にハナを返してくれたんだ?
今ハナが自分の手の中にいることが幸せで、そんな疑問もあっという間にかき消えてしまう。

人間たちが追いつかないほど走ってから、光鬼はようやく足を止めた。
それは虹色の魚をとったあの川だった。


「血が……」


月明かりに照らされた光鬼を見てハナが悲しそうに言う。


「もう血は止まってる。このくらいかすり傷だ」

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