わがままだって言いたくなる
第11話
比奈子はラグマットの上でままごとを
するように食べ物をあむあむ舐めていた。
舐めていたのは、
ドーナッツのおもちゃであったが、
食べたくなるくらい食品サンプルのごとく
美味しそうだった。
1歳なる前は、なんでも食べて確認することが多い。こういう時に食べてはいけないものを預けると危険なことも多い。
比奈子がおもちゃを舐めて
気がするんだら、
除菌シートでこまめに拭いた。
この作業も細かくて大変だ。
拭かなくて良いってことはないし、
舐めちゃダメって言うと機嫌を悪くして、
泣き続ける。
本当に食べてはいけないもの以外は寛容に受け止めなくてはならない。
そのため、今は、おもちゃも舐めても安全な
野菜でできたクレヨンや、
お米でできたおもちゃなど様々できている。
保護者としても安心安全で助かる。
子どもは、舐める以外に、
ミニカーを滑らせて、
タイヤをずっと見つめる大人にはわからない世界があったりする。
ただ走らせるだけじゃない。
どんなふうにタイヤが動くとか、
どういう角度で見るとかっこいいかなんて
考える。
そういう男の子が比奈子の近くで
遊んでいた。
隆二は、ぺたぺたとハイハイしながら
とにかく動くのが好きなようで、
迷路のようなラグマットの上を
ぐるぐるしていた。
比奈子は遠くから相変わらずドーナッツを
握りしめてアムアムしていた。
児童館の佐藤先生は、比奈子にままごとのお皿を準備して、ここに乗せてみてと誘導していみるが、それでも舐め続ける。
お腹が空いているのかと思ってしまう晃。
「こうやって見てると時間の進みが
ゆっくりになりますね。」
晃はぼそっとつぶやく。
「ゆっくりじゃないですよ!!
男の子は動きが激しくて着いてくの
大変なんですよ!」
隆二の母のあずさは少し遠くから叫ぶ。
ハイハイしていたかと思ったら、
今度はコロコロ転がる
柔らかいボールを追いかけている。
「確かに…。」
(塁もあんな感じだったなあ。
あんまり見てないけど。)
「お父さんなんですよね。
比奈子ちゃんの。」
比奈子の背中につけていた名札を見て、
ミニカーで遊ぶ男の子の母親が
話しかけてきた。
「そうです。
今月で9ヶ月になるところです。」
「可愛いですよね。
そのクルクルってなってる髪。
パーマかけてるみたい。」
まだ比奈子の髪を切ったことが無いが、
首あたりまで伸びた髪がくるくると自然となっていた。
地毛だったが、少し茶色っぽい。
「そうですかね。ありがとうございます。
息子さんは何歳になるんですか。
さっきからミニカーに夢中で
遊んでますよね。」
晃が声をかける。
話しかけられると返事をしなきゃという
気持ちになる。
「えっと小野孔雅《おのこうが》と
言うんですが、
もうすぐ3歳になるところです。
車が大好きでずっとミニカーで
遊んでます。
比奈子ちゃんは離乳食
始まってましたか?」
「そうなんですね。
この大きさで3歳ですか。
楽しみですね。
比奈子も孔雅くんみたいに
大きくなるのかな。
車好きなんですね。
男の子は定番って感じありますね。
比奈子は離乳食始まっているんですが、
好き嫌い激しくて困ってます。」
話に夢中になっていると、
孔雅の近くに隆二がハイハイして、
ミニカー遊びを
邪魔しに来た。
比奈子はドーナッツから今度、
キャベツのおもちゃをアムアムしていた
ところだった。
ちゃっかり、
さっき舐めていた
ドーナッツをお皿に乗せていた。
小さい赤ちゃんに邪魔されて
孔雅は悔しくて泣いた。
孔雅の母は、慌てて隆二のそばから
逃げ出そうとした。
「ちょっと、隆二。
いじわるしちゃダメですよ。
ほら、ボール遊びするよ。」
(ボール遊びに飽きたから、
こっちに来たんだよ。
わかってないなぁ。
このお母さんは。)
隆二はブツブツ文句をいいながら、
ミニカーを独占しようとする。
「孔雅、小さい子におもちゃ
譲ってあげようね。
ほら、こっちに怪獣フィギュアあるから
こっちで遊ぼう。」
「う、うん。」
泣きながら、ぐずぐずと怪獣フィギュアを遊ぶことにした孔雅、母の小野由美子は、頭を撫でて褒めてあげた。
隆二が荒ぶってミニカーで遊んでいると、
比奈子が近づく。
「だ、だぁ、だぁ。」
(何してるの~。)
とハイハイしながら、隆二の近くに行くと
バシッと隆二の持っていたミニカーが顔に当たった。
「ぎゃーーーー。」
顔が火を吹くように泣き叫んだ。
痛かったようだ。
晃は佐藤先生と話に夢中になっていたのを
振り切って、泣く比奈子のそばに駆け寄った。
「比奈子、どうした?」
「ごめんなさい。今、隆二が
ミニカーを持ちながら、
比奈子ちゃんの
顔に当たったみたい。」
「そうなんですね。
ヨシヨシ。
大丈夫、大丈夫。
血出てないから。
少しだけ…
ん?」
悪いことしたと思ったのか、
隆二は持っていたミニカーを置いて
ハイハイして、晃の体をバシッと叩き、
比奈子に近寄った。
ヨシヨシと右手で比奈子の頬を撫でた。
0歳同士の交流はこういうものなのかと
晃は感心した。
(痛かった。)
比奈子は小声で言う。
(ごめん、間違って当たった。)
隆二も小声で言う。
さっきまでギャン泣きだったのに、
泣き止んでいた。
落ち着いている姿に周りの
大人たちは驚いていた。
(やばい。バレる。
比奈子、泣け。
泣き止むな。)
(え?なんで!?)
(急に泣き止むのはおかしいから。)
(そっか。)
比奈子は演技全開でまた泣いた。
周りは、
なんだ、やっぱり赤ちゃんだよねと
納得した様子。
隆二は胸を撫で下ろしてホッとした。
比奈子はしばらく泣き続けて
晃にずっと抱っこされたままでいた。
するように食べ物をあむあむ舐めていた。
舐めていたのは、
ドーナッツのおもちゃであったが、
食べたくなるくらい食品サンプルのごとく
美味しそうだった。
1歳なる前は、なんでも食べて確認することが多い。こういう時に食べてはいけないものを預けると危険なことも多い。
比奈子がおもちゃを舐めて
気がするんだら、
除菌シートでこまめに拭いた。
この作業も細かくて大変だ。
拭かなくて良いってことはないし、
舐めちゃダメって言うと機嫌を悪くして、
泣き続ける。
本当に食べてはいけないもの以外は寛容に受け止めなくてはならない。
そのため、今は、おもちゃも舐めても安全な
野菜でできたクレヨンや、
お米でできたおもちゃなど様々できている。
保護者としても安心安全で助かる。
子どもは、舐める以外に、
ミニカーを滑らせて、
タイヤをずっと見つめる大人にはわからない世界があったりする。
ただ走らせるだけじゃない。
どんなふうにタイヤが動くとか、
どういう角度で見るとかっこいいかなんて
考える。
そういう男の子が比奈子の近くで
遊んでいた。
隆二は、ぺたぺたとハイハイしながら
とにかく動くのが好きなようで、
迷路のようなラグマットの上を
ぐるぐるしていた。
比奈子は遠くから相変わらずドーナッツを
握りしめてアムアムしていた。
児童館の佐藤先生は、比奈子にままごとのお皿を準備して、ここに乗せてみてと誘導していみるが、それでも舐め続ける。
お腹が空いているのかと思ってしまう晃。
「こうやって見てると時間の進みが
ゆっくりになりますね。」
晃はぼそっとつぶやく。
「ゆっくりじゃないですよ!!
男の子は動きが激しくて着いてくの
大変なんですよ!」
隆二の母のあずさは少し遠くから叫ぶ。
ハイハイしていたかと思ったら、
今度はコロコロ転がる
柔らかいボールを追いかけている。
「確かに…。」
(塁もあんな感じだったなあ。
あんまり見てないけど。)
「お父さんなんですよね。
比奈子ちゃんの。」
比奈子の背中につけていた名札を見て、
ミニカーで遊ぶ男の子の母親が
話しかけてきた。
「そうです。
今月で9ヶ月になるところです。」
「可愛いですよね。
そのクルクルってなってる髪。
パーマかけてるみたい。」
まだ比奈子の髪を切ったことが無いが、
首あたりまで伸びた髪がくるくると自然となっていた。
地毛だったが、少し茶色っぽい。
「そうですかね。ありがとうございます。
息子さんは何歳になるんですか。
さっきからミニカーに夢中で
遊んでますよね。」
晃が声をかける。
話しかけられると返事をしなきゃという
気持ちになる。
「えっと小野孔雅《おのこうが》と
言うんですが、
もうすぐ3歳になるところです。
車が大好きでずっとミニカーで
遊んでます。
比奈子ちゃんは離乳食
始まってましたか?」
「そうなんですね。
この大きさで3歳ですか。
楽しみですね。
比奈子も孔雅くんみたいに
大きくなるのかな。
車好きなんですね。
男の子は定番って感じありますね。
比奈子は離乳食始まっているんですが、
好き嫌い激しくて困ってます。」
話に夢中になっていると、
孔雅の近くに隆二がハイハイして、
ミニカー遊びを
邪魔しに来た。
比奈子はドーナッツから今度、
キャベツのおもちゃをアムアムしていた
ところだった。
ちゃっかり、
さっき舐めていた
ドーナッツをお皿に乗せていた。
小さい赤ちゃんに邪魔されて
孔雅は悔しくて泣いた。
孔雅の母は、慌てて隆二のそばから
逃げ出そうとした。
「ちょっと、隆二。
いじわるしちゃダメですよ。
ほら、ボール遊びするよ。」
(ボール遊びに飽きたから、
こっちに来たんだよ。
わかってないなぁ。
このお母さんは。)
隆二はブツブツ文句をいいながら、
ミニカーを独占しようとする。
「孔雅、小さい子におもちゃ
譲ってあげようね。
ほら、こっちに怪獣フィギュアあるから
こっちで遊ぼう。」
「う、うん。」
泣きながら、ぐずぐずと怪獣フィギュアを遊ぶことにした孔雅、母の小野由美子は、頭を撫でて褒めてあげた。
隆二が荒ぶってミニカーで遊んでいると、
比奈子が近づく。
「だ、だぁ、だぁ。」
(何してるの~。)
とハイハイしながら、隆二の近くに行くと
バシッと隆二の持っていたミニカーが顔に当たった。
「ぎゃーーーー。」
顔が火を吹くように泣き叫んだ。
痛かったようだ。
晃は佐藤先生と話に夢中になっていたのを
振り切って、泣く比奈子のそばに駆け寄った。
「比奈子、どうした?」
「ごめんなさい。今、隆二が
ミニカーを持ちながら、
比奈子ちゃんの
顔に当たったみたい。」
「そうなんですね。
ヨシヨシ。
大丈夫、大丈夫。
血出てないから。
少しだけ…
ん?」
悪いことしたと思ったのか、
隆二は持っていたミニカーを置いて
ハイハイして、晃の体をバシッと叩き、
比奈子に近寄った。
ヨシヨシと右手で比奈子の頬を撫でた。
0歳同士の交流はこういうものなのかと
晃は感心した。
(痛かった。)
比奈子は小声で言う。
(ごめん、間違って当たった。)
隆二も小声で言う。
さっきまでギャン泣きだったのに、
泣き止んでいた。
落ち着いている姿に周りの
大人たちは驚いていた。
(やばい。バレる。
比奈子、泣け。
泣き止むな。)
(え?なんで!?)
(急に泣き止むのはおかしいから。)
(そっか。)
比奈子は演技全開でまた泣いた。
周りは、
なんだ、やっぱり赤ちゃんだよねと
納得した様子。
隆二は胸を撫で下ろしてホッとした。
比奈子はしばらく泣き続けて
晃にずっと抱っこされたままでいた。